不登校の生徒を担当する中学校教員の方にとって、高校進学支援は大きな課題のひとつです。生徒一人ひとりの状況や気持ちを踏まえ、適切な情報提供やサポートを行うことが求められます。
この記事では、不登校生徒の高校進学を支えるために押さえておきたい10のポイントをまとめました。教育現場での具体的な支援に役立つ内容ですので、ぜひご活用ください。

この記事でわかること

  • 不登校生徒の高校進学支援に必要な10のポイント
  • 一次情報の重要性と活用法
  • SNS情報の取り扱いにおける注意点
  • 保護者や生徒への寄り添い方のヒント
  • 進学後のフォローアップに向けた準備

1.生徒の気持ちに丁寧に寄り添う

まずは最も大切なこと。それは、生徒本人の気持ちや考えを尊重し、焦らずに話を聞く姿勢です。無理に進路の話を急がせるのは悪手と言えるでしょう。まずは、生徒が安心して自分の気持ちを伝えられる、相談できる関係づくり、そして環境づくりに努めましょう。

2.焦らず生徒のペースに合わせる

進路選択のタイミングは個人差があります。周囲の状況に流されず、生徒が前向きに考えられる時期を見極める支援が必要です。「早く決めなさい」と急かしてしまうと、本当の気持ちを言えなくなったり、安易に流されてしまったりする恐れがあります。

3.学校見学やオープンスクールの案内を積極的に行う

保護者や生徒が一次情報を得られる機会を提供しましょう。「自分の目で見て決める」ということは、進路を決める上で欠かすことができません。初めての経験で生徒は緊張するかもしれませんが、緊張しすぎると見えるはずのもの見えなくなってしまうこともあります。1校だけ、1回だけではなく、できるだけ機会を設けて、生徒のペースに合わせた見学を支援します。

最近では全日制高校ばかりでなく、通信制高校も積極的な選択肢として進学先の候補に挙げられることが多くなってきました。朝が苦手な起立性調節障害や人間関係への不安、あるいはスポーツや芸能などに集中して取り組みたい、そんな生徒さんの場合には、通信制高校を選ぶことでより充実した高校生活を実現できる可能性が高まります。

4.オンライン説明会や資料請求の活用も提案する

外出が難しい生徒にはオンラインでの情報収集を紹介するとよいでしょう。あらかじめ情報が入っていることで、「実際に見てみたいな」という気持ちになってくれる可能性もあります。また、保護者のみ見学、生徒本人がオンラインやパンフレットなどで確認、などの方法もあります。無理のない方法で学校理解を促します。

5.SNS情報の取扱いに注意を促す

保護者や生徒がSNS情報に振り回されないよう、情報の取捨選択のポイントを伝えましょう。
昨今、SNSでは簡単に情報を得られるようになってきました。しかしそれはあくまでも、投稿者の主観であることが多く、不必要にバイアス(先入観)を盛ってしまう恐れがあります。一面的な情報だけで判断しないよう、冷静な姿勢を促すことが重要です。

6.生徒に合った学校選びを支援する

進学先の高校選びの1つの基準に「偏差値」があります。しかし、偏差値だけでなく、学習環境や支援体制、生徒の安心感を重視した学校選びを一緒に考えましょう。生徒にとって大切にしたいことは何か(例えば、部活が盛ん、自由な校風、高い進学率、海外交流が充実しているなど)優先順位をつけつつ、複数校の特徴を整理して比較するといった手助けも有効です。

7.学校以外の居場所や通信制も検討する

フリースクールや地域の支援団体、オンライン学習環境など、学校以外の居場所についても情報提供しましょう。生徒の社会性や自己肯定感の向上につながります。

8.経済的負担と支援制度について保護者に情報提供する

私立高校や通信制高校あるいはサポート校の場合、家庭における学費負担については、保護者が気になるところかと思います。必要に応じて説明を行い、就学支援金や奨学金制度などの活用を促します。

9.必要に応じて医療・心理的支援を連携する

メンタルヘルスや発達特性の課題がある場合は、医療機関やカウンセリング機関との連携を図りましょう。適切な専門支援を案内することが生徒の安心につながります。

特に通信制高校の場合には、不登校の経験のある生徒の在籍が多いため、そうしたケアが充実した高校もあります。高校における個別サポートなども合わせてチェックしておけるとよいでしょう。

10.教員自身のケアと連携体制の構築を忘れない

不登校支援にあたる教員自身の負担も、大きくなりがちです。チームで情報共有や相談を行い、教員同士で支え合う体制づくりを心がけましょう。また、保護者や地域の支援機関とも連携して支援の幅を広げることが望まれます。

おわりに

不登校の生徒が安心して高校進学を迎えられるよう、そして前向きに高校生活に臨めるよう、中学教員として多面的な支援が求められています。この記事の10のポイントを参考に、生徒と保護者に寄り添いながら、より良い進路支援を目指してください。
教員の皆さまのご尽力に敬意を表します。

四谷学院ブログ編集部

通信制高校を検討されている中高生とその保護者の方にお役に立てるよう、通信制高校や大学受験に関する情報を発信していきます。
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