
プロ野球の第一線で活躍してきたトレーナー、内田幸一先生。プロ野球選手の青柳晃洋投手(2021最多勝、最高勝率、2022投手三冠 現東京ヤクルトスワローズ)をはじめ、数々のトップアスリートを支えてきた内田氏が、2026年春、四谷学院高校野球部の新たな挑戦に加わります。本村幸雄監督とともに目指すのは「日本一」。高校野球という新たなフィールドで生徒たちに伝えたいこととは――。オンラインインタビューで、その想いを伺いました。
本村監督率いるチームで日本一を目指す
プロトレーナーとして青柳晃洋投手をはじめ数多くのトップアスリートを支えてきた。神奈川県光明学園相模原高校時代から本村幸雄監督とは長年の信頼関係にあり、2026年始動の「四谷学院高等学校野球部」で再タッグとなる。

———四谷学院高校からのオファーを受けた理由を教えてください。
本村幸雄監督が監督を務められるからです。以前、本村監督が光明学園で監督をされていた時に、私はずっと下でやらせていただいておりました。本村監督が日本ハムファイターズに異動されてからも、ずっとまたアマチュアに戻って監督をやっていただきたい、そして「日本一になってほしい!」と思っておりました。若い頃から私の中には、本村監督を日本一にするという約束がありました。ですから、本村監督に「こんな話が来ているのだけれど」と言われた時に「ぜひやってください」とお伝えしました。その時に本村監督に誘われ、喜んでお引き受けしました。
———高校野球に挑戦するにあたって、楽しみにされていることは何ですか?
これまでかかわってきた大学生やプロの選手は、正しいことを教えていくと変わっていきました。高校生は成長が早い分、変化もさらに早いと思います。その場で、目に見えるように変わっていくはずです。やりがいを感じる反面、緊張やプレッシャーもありますが、選手の成長が本当に楽しみです。
———現代の高校球児たちを取り巻く環境について、どう思われますか?
野球の指導は今、過渡期に入っています。情報があふれていて、例えばトレーニング動画などはYouTubeやInstagramであふれています。しかし、「なぜこれをしているのか」「なぜこういうことになるのか」そういった説明を省略した動画がほとんどです。せっかく情報があっても正しく使えません。ですから、正しい情報を正しく使えるようにならなければいけない。かっこいい動画を見て、「あ、これは自分に合わないな」とか「これは自分に今すごく合っている」とか「なるほど、このためのトレーニングなのだな」と、自分で発見ができるような選手を育成していくのが、これからの時代は大事なのかなと思います。
トレーニングにも言語化は欠かせない
———トレーニングで一番大切にしていることは何ですか?
トレーニングのベースは、やはり障害の予防です。パフォーマンスアップよりも、まずけがをしない体づくりが第一だと思います。
私は基本的に逆算方式でいくので、「理想的なフォームはこれですよ」と先に提案してしまいます。「こういう投げ方、こういう打ち方、こういう走り方をするとけがが少ないよね」というところから、「それではこうなっていくためにはこういうトレーニングが必要で、今はここ改善しなければならない」という流れで会話をしていきます。
———論理的に、しっかり言葉にして伝えていくということですか?
感覚だけではなくて、「こうだからこうなる」という言語化ができるレベルまで行っていくと、正しい動作がしやすくなります。人に伝える時もそうですし、選手自身が自分の動きを理解するときにも言語化は非常に大切だと考えています。
———四谷学院高校は文武両道を掲げていますが、勉強についてはどう思われますか?
私は高校時代に、わからないところがわからなくて、勉強が本当につまらなくなってしまった時期がありました。しかし、わからないことがわかるようになったら、勉強は楽しいですよね。四谷学院の55段階個別指導システムを知って、四谷学院高校の生徒が羨ましいと思いました。

誰でも才能を持っている。だから、やればできる
———四谷学院高校の生徒たちに、一番伝えたいことは何ですか?
四谷学院の「誰でも才能を持っている」、私も基本的にその考え方がベースにあります。「できるかできないか」ではなくて「やるかやらないか」だと思うのです。よっぽど物理的に無理なこと以外は、やればできる。100メートルを9秒後半で走るようになるとか、そういうのはやはり難しいと思います。しかし、ある程度プロ野球で活躍できる、プロ野球に入れるぐらいの課題や問題というのは、やればできる。それは伝えていきたいですね。
———四谷学院高校の「文武両道」についてはどう思いますか?
勉強は正しいやり方で行えば成果がでるし、その成果もわかりやすいものです。勉強で成果が出れば、きっと野球でもより良い方に向くと思います。「こうすれば絶対うまくいく」と。ですから、「文」も「武」も基本的には別のものではないと私は思います。お互いにプラスになるのです。
———これまでサポートしてきた中で印象に残っている選手はいますか?
阪神タイガースの青柳晃洋投手は、私の自慢の弟です。接した時間も長く、接し方もすごく濃密でした。実は、彼は中学校まで三番手ピッチャーでした。それを努力、そして考え方、取り組み方、動作の習得で、阪神タイガースのエースにまでなりました。一つひとつクリアして、クリアして、今の場にいる。こうすればここまで変われますよというのは、基本的にはやればできるという証明だと思います。また、帝京大学で15年ぐらい見てきた中では、高校の時から痛みを抱えていて、大学に入ってもなかなか思うように投げられなかった選手たちがいます。しかし、本当に日々欠かさず私が処方したメニューを続けて、最終的にはメンバーに入って公式戦で投げることができました。そういう子が投げると周りも盛り上がる。それが印象に残っています。

本村監督の目指す「人間教育」に期待。よい経験を選手に積ませたい
——— ひとつずつ、今できることを努力することは大切なのですね。
結局、コツコツと行っていくことは、いつかその子にとって最高のものが作れると思うのです。そういう良い経験もさせてもらいましたし、逆に努力しなくなってダメになった選手もたくさん見てきました。だからこそ、本村監督が目指す「人間教育」に期待を寄せています。自分の将来を見据えて、日々きちんと目標を持って、反省もして。そういうバックボーンがある中で、良い経験を選手たちに伝えていけるのは非常に心強いです。
———選手に寄り添う上で、一番大事にしていることは何ですか?
選手の話を聞いていると、それぞれ理由があってそうしている場合もあります。ですから、その背景、その選手の生きてきた文脈、そういうものを会話の中から聞き取っていきたいと思います。私の立場は、選手の命を背負う仕事だと思うのです。もちろん生命の命も守らなければいけないし、選手生命も、その子の野球人生も。ですから、「この人がいるから大丈夫だ」とか「この監督がいるから頑張れる」と選手に思ってもらいたいのです。そこがおそらく、私の一番の役割で、一番の寄り添い方だと思っています。
(おわりに)
インタビューの最後、内田先生と本村監督は話される言葉だけでなく、雰囲気もとても似ていると伝えると、内田先生は笑顔で答えてくれました。
「日本ハムファイターズの選手からも『そっくりですよね』とだいたい言われます」
そして、こう続けました。
「寄りかかってもらえればよいと思います。何か疲れたら、寄りかかれるようにはしてあげたいですね」
プロの世界で培ってきた確かな技術と、選手一人ひとりに寄り添う温かさ。内田先生のもとで、四谷学院高校の生徒たちは、野球選手としても、一人の人間としても、大きく成長していくことでしょう。
本村監督と内田S&Cコーチ――二人が導く四谷学院高校野球部の挑戦が、いよいよ始まります。
※この記事は、2026年2月に行われたオンラインインタビューを基に作成しました。
→本村監督のロングインタビューはこちらから。
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